形見

田舎

ペットを亡くした友達は、形見の首輪を枕元に置いて寝てるという。

もう現実に会うことは無理だけど、きっと夢で会える…そう信じたい。


祖父は私が中2の時に亡くなった。

相当悲しかったのか、一時、円形脱毛になってしまった。


ステンレス製のSEIKOの手巻きの腕時計を形見にもらった。

しょっちゅう眺めては、いつもギリギリまで巻いていた。

防水だったので風呂場でも着用してたら、ふやけた皮膚が切れてしまうこともしょっちゅうだった。

けれど、あまり気にならなかった。

小さい頃、川沿いの堤防を散歩して、赤とんぼとか童謡を歌ってくれたことを思い出したりした。


そのうち、防水のはずなのに、時計のガラスの内側が曇ってきた。

やがて、ゼンマイが切れてしまい、時計は止ってしまった。

ショックだったが、その時計は、いつの間にかどこかに紛れ込んでしまった。


今、生きていれば、祖父は85歳くらいだ。

まだまだ生きてて欲しかった。


形見はいらないから、私よりも先に大事な人がいなくなるのは、もうイヤだ。