慰霊の森

岩手に帰省していたときの話。

連日連夜の猛暑で参ってしまい、郊外に行けばちょっとは涼しくなるだろうと思い、

夜9時過ぎにクルマでプラプラと出かけることにした。

盛岡市内から程近い岩山公園に行くと、アヤシイ車が結構止まっていた。

どうも夜景を目当てにカップルが来ているようだ。

雰囲気的に一人でいるような場所じゃないし、ぜんぜん涼しくもないので、

移動することにした。

ナビの画面を見ながら、盛岡の隣の雫石町にある御所湖というダム湖に行くことにした。

水のそばならちょっとは涼しいだろう。

つなぎ温泉という有名な温泉地を過ぎ、しばらく過ぎると、ナビの画面上に気になる道を発見した。

御所湖から左手に入る、山の方に向かう一本道だ。

どこにもつながっていないところを見ると、山頂あたりまで行くのだろうか。

何の気なしにその道に入ると、なんだか妙な感じだ。

林の中から、誰かに見られている、というか上から覗き込まれている。

以前、夕暮れ時に、上野の寛永寺の墓地を歩いてたときに同じような感覚に襲われて、

視線を向けるとネコがこっちを見ていたというコトがあったが、

今は走っているクルマの中であり、テクテク歩いているのとはワケが違う。

道の奥に進めば進むほど、イヤーな感じが強くなってきた。

強引に方向転換して一目散に元来た道を引き返した。

バックミラーなど怖くて見れない。


帰ってからネットで調べると、どうやらそのあたりは、

昭和46年に起きた航空機事故現場で、全日空機の乗員乗客162名全員が死亡した場所−

−「慰霊の森」と呼ばれている一帯のようだった。