尻焼温泉
友人と群馬の尻焼温泉に行ってきた。
ここは、川底から温泉が湧いており、上流と下流に小さな堰堤を作って、
その区画が露天風呂になっているという、なんとも野趣溢れるシロモノなのだ。
当然無料だ。
温泉は鮮度が命。源泉と浴槽の距離が短ければ短いほど良い。
遠くなればなるほど、ガス成分が抜けたりなど変化が生じる。
タンクローリで温泉を運んできているような、首都圏近郊にありがちな
日帰り施設などはもっともイタダケナイのだ。
その点、ここは浴槽(=川)の底から直接湧出しているわけだから最高。
あんまり見物客など居なけりゃいいが…などと言いつつ現地に到着すると、誰も居ない。
これはラッキーと思ったのもつかの間、露天風呂の場所を見ると、
梅雨時の増水で轟々とした流れとなっていて、入れない状態であった。
入ったとしても温泉湧出量に対して圧倒的な水流だったから、
完全に「冷水」であっただろうし、下流に流されてしまいマヌケな姿を晒すことになるだろう。
川の露天風呂がダメでも、すぐそばに小屋掛けのちゃんとした風呂もあるので、
そちらに入る。こちらも無料だ。
先客が居たがすぐに出て行ったので、友人と2人での貸切状態。
脱衣スペースが浴槽のすぐ隣で、しかも狭いので、浴槽に転落しないように
気をつける必要がある。
入ると熱い!! が、ちょっとガマンするとじきに慣れた。
源泉かけ流しで、お湯も柔らかい感じで非常に良い。
ただ、コケみたいのでヌルついていたり、剥がれたコケが浴槽に沈殿していて、
入るとそれが巻き上がって、若干うーむ…という部分があったけど。
しばらく浸かっていると、どこかの旅館に泊まっているのだろうか、
浴衣姿のオッサンが覗きこんできて、去っていった。
入りたきゃ入ればいいのに。
いつの間にか雨が降り出した。しかし、小屋掛けしているから濡れる心配はない。
川に面した部分はまるっきり開放されていて、眺めも良い。
静かな山あいの温泉。なんと至福のひと時だろうか、とノンビリしていると、
再びヒトの気配。今度はオッサン一人という感じではない。
しかし、全然入ってくる気配なし。なんなんだ?
我々も、温泉を堪能したので、風呂から上がろうとすると、
さっきのオッサンが覗き込んできて、「もういいですか?」と聞いてきた。
もう出るところだから、「いいですよ」と答えたけれども、何かしっくり来ない。
そもそもこの温泉は誰が入っても構わない温泉だし、別に入りたければ
「もういいですか?」などと断る必要など全然無いのだ。
着替えて出ると、イイトシこいた3組のオッサンとオバサンが待っていた。
見ると友人同士のようだ。
我々が入っているところに、入ってくるのが恥ずかしかったのだろうか。
いやいや、互いによく知っている3組の夫婦が一緒に入る方が、よほど恥ずかしいだろうに。
逆に、この人たちが入っているところに、ほかのヒトが入ろうとしたら、
今入っているので…とか何とかいって、入ってくるのを断るのだろうか。
そんなコミュニケーションがとれないヒトたちは、このような共同浴場に来る資格無し。
黙って、旅館の貸切風呂にでも浸かってなさい!