富士山一周サイクリング

自転車と富士山

富士山一周サイクリングに行ってきた。

図書館で借りてきたガイドブック、「神奈川自転車散歩」(山と渓谷社)を見てたら

「自転車乗りなら一度はあこがれる」というようなキャッチフレーズで、

このコースが紹介されていたのだ。

自分は一度も憧れたことは無いけども、地図や解説を見てると次第に憧れっぽくなってきた。


ランクルに自転車を積載し、朝6時半に出発。

東名高速で秦野中井まで行き、国道246沿いの道の駅「ふじおやま」に9時半ごろ到着。

新しい道の駅のようで、私のカーナビには出ていない。

御殿場駅前に市営の有料駐車場があり、当初そこを利用しようと思っていたが、

数キロ離れているだけだし、ここを出発地点にすることにした。

自転車を下ろすなど準備をしていると、タオルとワイヤ錠を忘れたことに気づいた。

タオルはヴァームをハコ買いした時にオマケでついてきたチャチなものでなんとかするが、

ワイヤ錠はどうしようもない。途中でホームセンターがあったら買うことにしよう。

9時40分に出発。R246を御殿場方面に進む。

のっけからダラダラ登りで、スピードが出ない。県道151号に入り須走方面を目指す。

富士山を反時計回りに周回するのだ。

この県道もひたすら登り。急勾配ではないが延々と続くのには参る。

10月も半ばだが早速汗かきになってしまった。半そでを着てきて正解だったと思う。

道路の両側にゴルフ場が広がってきた。ヘタクソゴルファーの打球がこっちに飛んでこないか、

ひやひやする。

10時12分、国道138号に合流。「御殿場驛道」の石碑があった。

国道に入り若干勾配が緩くなったような気がしたが、信号待ちしている間に足が少しだけ回復した

だけのことだった。

国道は篭坂峠までひたすら登り。サイクリストの姿は見えず、車・バイクばかりだ。

須走から、自動車専用道路と一般国道に分かれる。当然一般道へ。

まもなく、富士山5合目への道路、ふじあざみラインの分岐に差し掛かった。

一度だけクルマで行ったことがあるが、急勾配の連続だった気がする。

「今度登りに来ようかな」などと心にも無いことを思って、国道を行く。

朝飯を家で食べてきてから4時間ぐらい経ってきたせいだろうか、ハラが減ってきた。

登りでハンガーノックするのは最悪なので、セブンイレブンを見つけて立ち寄る。

しかし、サンドイッチやおにぎりの類は殆ど売り切れ。フルーツサンドイッチと肉まんを買う。

このセブンイレブンではおそらく10年に一度ぐらいの組み合わせに違いない。

店外で食べているとキイロスズメバチのようなのが不気味な羽音を立てて飛んできた。

ヘルメットの黒い色を見て攻撃的になっているのだろうか。

「何もしないからねー」とそっぽを向いて肉まんを食べていると、いきなり目の前に飛んできた。

アセって、肉まんを一口で頬張って出発。蒸し器から出されたばかりの肉まんの

熱蒸気攻撃により口の中は大変なことになってしまった。

国道は林の中を進むが、頻繁に小さなカゲが猛烈な勢いでスクランブル攻撃を仕掛けてくる。

多分ハチだ。

そういや10月はハチが攻撃的になるシーズンだった。登りの自転車には文字通り泣き面にハチだ。

林を抜けると、下方に広がる街並みの景色が素晴らしい。よく登ってきたなぁ。

「藤原光親」の墓所を国道沿いに見つけた。駐車スペースも無いし擁壁の上にあるし、おそらくクルマ

では気が付かないだろう。解説板を見ると、「当所より上方300メートルの地点で斬首…」とある。

気味が悪いのですぐ出発。

11時に「山梨県山中湖村」の案内標識が出てきた。これで登りも終わりかと思ったが、峠はまだ先。

11時3分、篭坂峠に到着。標高1,104メートル。ガイドブックに従い国道から離れ別荘地への

道に入る。しかし、舗装は悪いしカーブが多いし、少ないとされていた交通量もそんなに少なくないしで、

国道をまっすぐ山中湖畔に下りてくれば良かったと後悔。

別荘地は湖からやや離れているので、ついに山中湖の姿を拝めずだった。

山中湖から富士吉田までの国道は緩い下りが続き、快調に行く。

風を孕んで広がっていたTシャツの首の部分に突然ムシが飛び込んできた。

Tシャツの上からバンバンやってムシを追っ払ったが、チクと痛みが走った。

11時22分、富士吉田市に入る。富士浅間神社のあたりでは完全に渋滞していた。

路肩も狭くなっているので、自転車でもスムーズには進まない。

国道から富士山側に少し入ったところに、「あらきてぇ」といううどん屋を発見。

ちょうど昼飯どきだしこの街はうどんが有名なので、ここで食べることにする。

店の前にはだだっ広い駐車場があるが、「車上荒らし注意!」の警告がデカデカと出ているのが

気になる。ここまで来るうちにホームセンターが無いので、ワイヤ錠はまだ買えてないのだ。

まあいいやと店の外壁に自転車を立てかけて入店。

あらきうどん大盛り(750円)を注文。肉・てんぷら・きんぴらがトッピングされている

この店でもっともゴーカなメニューだ。もちろん普通のうどんもあり、それは350円。

オバさんに口頭で注文してしまったのだが、お冷を飲みつつ、若干冷静になって店内を見回すと、

テーブルにメモ紙があり、それに記入してオーダーする仕組みで、ほかの客はそれに従っていた。

自分だけズルした気分になった。

店主と奥さんの2人だけでやっているような感じだったので、注文違いを防ぐためにも有効か

とは思われるが、うどんうどん!と逆上気味の客はメモ紙の存在は気が付かないだろうなぁ。

カウンターには、唐辛子ベースの「すりだね」と呼ぶ富士吉田独特と思われる薬味もあった。

腹ペコの身にうどんは非常に美味しかったが、お冷として飲んだ水も旨かった。

店の外に出ると、自転車は無事に佇んでいた。11時53分出発。

右手に富士急ハイランドを眺めていると、11時58分、富士河口湖町へ入った。

富士河口湖町のマークが富士急ハイランドのマークと何となく似てる気がする。

ガイドブックでは、このままR139を直進することになっているが、

ここまで来て富士五湖を全然見ないのもなぁと思い、河口湖に行くべくR139から外れる。

途中の県道で「自転車多い」旨のクルマ向けの警告標識が出てきたが、確かにレーサーが多い。

道の駅「かつやま」に12時19分着。以前にクルマで来たときには、

紅葉がキレイだったが、これからといった感じだった。

湖沿いの道は平坦で嬉しいなぁと思っていると、西湖へ至る道が登りになった。

文化洞トンネルの手前で登りは終わる。会社の秘書の話では幽霊トンネルとのことだが、

明るい昼間だし全然怖くないもんね。トンネルの向こうは西湖。

湖の北岸を走る。いたるところ富士山がキレイに見える。クルマだと駐車スペースが無いが、

自転車だと気が向いたときに止まれるのが嬉しい。

西湖が終わると再び登り。その後下り。アップダウンばかりだ。

13時7分。青木ヶ原樹海の看板。

樹海の写真を撮ろうかと思ったが、妙なモノが写ってもイヤなのでヤメた。

精進湖への分岐が現れたが、先を急ぐべく湖はパスした。

本栖湖への5%勾配の下りが出現。時速65.6キロで周囲のクルマの速度と均衡した。

時折道路の継ぎ目が現れるが、我がジェイミスのオーロラのクロモリフレームは

衝撃をうまく吸収してくれて不安が無い。

13時20分本栖湖到着。ガレた感じの湖岸をちょっと散歩する。

出発してすぐに登りが現れた。勾配は5%。さっきの逆だ。

クルマは60キロ出せても、自転車は20キロも出やしない。

途中勾配が緩くなったりしながらもひたすら登り。途中サイクリストとすれ違い挨拶を交わす。

相手は下りだから笑顔が爽やかだが、こっちは引きつっていたに違いない。

13時44分。県境に至る。ここからは静岡県富士宮市だ。原っぱ(牧場?)が広がり

富士山がその向こうに見えている。

基本的にずーっと下りが続き、時速40〜50キロペースで進む。

道の駅「朝霧高原」が現れたが、快適な下りに水を差したくないのでパスした。

突然自動車専用道路の標識が出現。今までのR139とはお別れして、県道414号に入る。

白糸の滝の分岐まで来た。ガイドブックでは滝は必見のようだったが、下りていく階段が面倒だし、

これまでクルマで2〜3度来ているのでパスした。快適な下りはここまで。

県道72号に入るとアップダウンがお待ちかねだった。ガイドブックではさらっと流しているが、

実に疲れる。

R469と合流して、14時55分、富士市の標識が現れた。

ネコが一匹そばの草むらで寝ている。近づくと警戒して逃げ出しそうだった。

富士市は製紙工場のせいでかなり異臭漂う町だが、さすがにここまで上だと大丈夫だった。

これまで走ってきて分かったが、富士吉田市富士河口湖町富士宮市富士市と、

富士山にあやかった自治体名の多いこと。まるで「富士」をつけなきゃソンだと言わんばかり。


ガイドブックによると、裾野市境まで登りだという。

いい加減足が売切れそうだが、止まったら終わりだと思い黙々とローギアで進む。

これまでの疲労も加わって、坂の厳しさは最初の篭坂峠どころではない。

富士山こどもの国の入り口で一休み。石を積み上げて人の顔に模したものに、

「ぼくの名前はろっくんです」などと案内がしてある。

石だからロックなのねと納得したが、わざわざ名乗るほどのものだろうか。

きっと、あの石積み顔の名前を知りたいという要望が数多く寄せられたに違いない。

さもなくば、たとえば居酒屋のタヌキの像に「ぼくタノくんだよ!」などと表示するに等しい、

愚挙だといいたい…と、突っかかり気味の思考も、ひとえに疲れが原因だろう。

下を向いて走っていると、工事関係のペンキだろうか、2000とか1900とか数字が

見えてきた。ひょっとすると、市境への距離のカウントダウンか。

数字が200になってまもなく裾野市境に到着した。15時52分。

一帯は十里木高原というところで、道路右手の山肌にはススキの原が広がっている。

しばらく休憩するが、夕方近くなってきたせいか風が冷たくなってきたような感じがして、

半そでTシャツのいでたちに心細さを覚えて出発。

国道は10%の急勾配の下りになったが、カーブが多い上に交通量も多くあまり快適ではない。

急勾配も終わると、国道は御殿場方面へやや北進。

陸上自衛隊の演習地が道の左右に広がり一面ススキで覆われている。実に雄大で素晴らしい眺めだ。

富士山を周る道路は意外に風景の変化に富んでいるんだなぁと思った。

多少の登りが現れても、この景色のおかげだろうか、ものともせずに進むことができた。

御殿場市内でちょっと道に迷ってしまったが、R246に合流。

17時ちょうどに、出発地の道の駅「ふじおやま」に到着。

走行距離122.4キロ。予想はしていたが、アップダウンが多くてくたびれた。

ハラが減ったので、道の駅のレストランで大盛りざるそば(500円)を注文。

地元の新鮮な素材と、おいしい水が自慢のようだったが、出てきたそばは、

コシというのとは違ってただ固いだけのどうにも困ったものだった。