一般参賀

やはり皇国の臣民としては、正月2日は皇居の一般参賀にというのが自然な感情であろう。

行けない場合はNHKで一般参賀の中継を見て、陛下のお言葉にありがたく耳を傾け

るのだ。

…と、いうような思想は無いのだけれども、興味半分で一般参賀に出かけてみることにした。


12時15分に家を出た。

13時ちょっと過ぎにパレスホテル付近に差し掛かると、内堀通りは車両通行止め。

自転車も通れない。

仕方なく丸の内の明治生命館のそばに駐輪し、二重橋に向かってテクテク歩いていく。

途中、日の丸の小旗を配っている人たちから1つ受け取る。

皇居前広場で手荷物検査を受ける。カバンのありとあらゆるファスナーを開けられ

入念なチェック。カバンの底のほうまで徹底的に見る。

食べ物の所持を聞かれたので、無いと答えた。飲食禁止なのだろう。

面倒くさ。これならデジカメ1つだけ手にぶら下げてくればよかった。

カバンやポーチが無い人は当然荷物検査はパスなのだ。

次いで、ポケットの中の物を全部出すように指示があり、金属探知機を体に当てられる。

ピーピー鳴らしている人も居たが、即、警官に連行されていった(嘘)

更に、コートの前ボタンを開きボディーチェック。

コンサートのカメラチェックのような形式的な感じは一切無く実に厳重。

テロの時の空港の荷物検査よりも厳しいだろう。

更に、通路に沿って制服警官・私服警官がこれでもかというぐらいに配され、

参賀客を見張っている。

国家権力なんだぞ。すごいんだかんな!という感じだ。

皇居正門に差し掛かる。ここまでが普段来れる場所だ。

儀仗隊の人が直立不動で正面を見据えている。

門に入り、右曲がりのゆるやかな坂を上る。二重橋を渡り、左手に伏見櫓が見えてきた。

櫓といいつつも、これだけでもどこかの城のようだ。

門をくぐると、皇族の方々がお出ましになる建物「長和殿」がすぐに見えてきた。

と、まもなくお出ましの放送が流れてきた。

13時30分のお出ましの時間まであと2分しかないが、広場は人だかり。

もっと前に行きたかったが、目の前のハゲジイさんが後から来る人たちを

ニラミつけるものだから、行きにくい。

しかし、このジイさん、歴史の教科書に載ってた「ムッソリーニ」そっくりだ。

両陛下をはじめ皇族方がお出ましになると、日の丸の小旗が乱舞した。

しかし、どいつもこいつも頭上で振り回すものだから、見えにくいったらない。

デジカメで撮ってみたものの、全然ダメだった。

天皇陛下のお言葉が終わると、目の前のムッソが、大音声かつ堂々とした様子で、

両手を挙げ、「天皇陛下ッ、バンザーイ!」

それを機に、周辺からも「天皇陛下万歳」の嵐。

ここは日本国ではなく、大日本帝国か!

時間が来たのか、皇族の方々は笑顔満面でお手振りしながら、視界から消えていった。

旗に邪魔されるし、全然納得いかないので前方へ移動し、なんとか中央部に近いところの、

前から3列目ぐらいのところに動けた。

前には小柄なジイさんが、バアさん連中に、「ナンタラ中将は…とか、密林の銃撃戦では…とか」

戦争の体験を嬉々として話している。なんとなく二等兵っぽいなと思ってしまった。

バアさん連中は、「こんなに大勢の人たちが来て、非常に嬉しい」というようなことを話している。

別にバアさんたちを喜ばすために来てないんだけどな。

皇族ファンが大勢居ることに満足しているのだろうか。

バリケードの前には、一段高いところに車椅子用の参賀スペースが設けられて、

結構な数の車椅子の方が見えた。

車椅子そのものは当然低いのだが、付き添いの人が立ったままだと視界を遮りがちだ。

そこへ前のバアさんたちが噛み付いた。「見えない!、付き添いは座れ!」と。

しかし、なんだか文句の内容を聞いていると、「私らはギュウ詰めのところで立って待っているのに、

あんたら車椅子の人たちは、待ちもしないで私らよりも前のほうに行けてズルい!」

というようなニュアンスだ。

ほんと、こういうババアは皇居からつまみ出して欲しい。車椅子は優先されて当然だろうが。

50分待って、慈愛に満ちた笑顔を見せながら、両陛下はじめ皇族方がお出ましになった。

しかしガラスが反射して、またしてもうまく撮れなかった。

二等兵は、ムッソに負けず劣らず、「天皇陛下皇后陛下万歳!」を絶叫していた。

参賀客には、外国人観光客やわたしみたいな比較的若い人も結構居たが、それにもまして、

ムッソや二等兵のようなご老人が多かった気がする。

このような方々は、ワタシと違って、本当に心の底から天皇陛下万歳なんだろうなぁ。