初対面

友達ご夫婦のところへ遊びに行った。

東京から11時間後、電車を乗り継ぎその町に到着した。

駅の階段をのろのろと上り改札を出ると、一緒に降り立った乗客はどこに散ってしまったのか、

駅前広場はしんとしている。バス1台止まっていない。閑静。

とりあえず、観光案内所に出向き地図をもらい、駅前の宿にチェックインして荷を解く。

家までの道順は事前に調べておいたが、途中からあてずっぽうになってしまった。

少しぐらい迷ってみるのも、それはそれで楽しいが、

静かな町でヨソモノがウロウロしている姿は極めてアヤしいので、

すれ違う人にはあいさつする。

周りが山であるところへ、日没が迫ってきて少々アセるが無事到着した。


当たり前のことだが友達が出迎えてくれた。だんな様は仕事でちょっと遅くなる由。

それにしても、知っている人でも知らない町で会うというのは、不思議な感じ。

暖房の効いた暖かい部屋に入ると、赤ちゃんがおもちゃで遊んでいた。

私を見ると、眉毛の片一方を上げて、「誰だ?」というような怪訝な表情を浮かべた。

泣かれたらどうしようと思ったが、大丈夫だった。なかなか大人しい。

だんな様がお帰りまでの間、赤ちゃんと遊んだ。

ガランガランと鳴るおもちゃは、なかなかエキゾチックないい音色だと思った。

抱っこもさせてもらったが、ずしっとした重みで、終いには腕がぶるぶるしてきた。

毎日はキツいなぁと思った。

だんな様が帰ってきた。初対面だが、今までに見た写真等の様子とあまり違わず、

実にやさしい感じがした。

自分も10年前は、そういうやさしい人だったのになぁ。

無口な方と伺っていたが、お酒が入ってくるうちに、段々といろいろな話ができて良かった。

手料理をつまみにお酒も進み、また赤ちゃんとも遊びながら時間が過ぎてしまい、

あっという間に午前0時になってしまった。

暖かい家族の空気に触れられたなぁと穏やかなココロになり、おいとました。

外の空気も何となく暖かく感じつつ、途中大通りまでだんな様に見送って頂いた。

次の日、酔いも冷めて昨晩のことを思い出してみたが、何を話したんだろうかと

曖昧になっていることに驚いた。トシをとったなぁ。

機会を設けてまた行きたいが、今度は赤ちゃんは人見知りするんだろうと思うと、

少し自信が無い感じもした。