出来るOL

疲れない自転車の走り方が自転車の雑誌に載っていたので、それを試すために、

水戸の実家まで走りに行った。

要は軽いギアで、くるくる回すように走るというやり方なのだが、確かに今までに

比べて疲れなかった。

ミニアンパン3つと、コンビニのサンドイッチ1つ、

アサヒのH2Oというペットボトル2本で、100キロ余りを走ることが出来て、

なかなか燃費が良い走りをしたと思った。


予め電話で約束した中学時代の友達に、10年ぶりぐらいで会った。

以前から引きこもった生活をしているが、あまり様子は変わってなくて安心した。

いろいろ話しているうちに、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、

再会を約束して辞去する。


実家に戻り、夕食を食べて、水戸駅から輪行で再び川口に戻る。

ほかの客に迷惑にならないように、最後尾車両に乗り込む。

酒のワンカップの空びんがコロコロと転がってくるのが、いかにも常磐線らしい。

夜の日曜の上りはガラガラだろうと思っていたが、次第に混んできた。

土浦から、「もう信じられない!」とかブツブツ言っている若い女性と、

その連れの男性が、ワタシの居る席の隣のボックスシートに乗り込んできた。

変なニオイのフレグランスとともに、なんだかギスギスしたオーラを放っている。

イヤでも話が耳に入ってくるが、どうやら研修に関係することでいろいろ

あったようだ。

「なんで、ワタシがこんな遠いところの場所なのよ!なんで、新宿の本部とかじゃないのよ。

九州支社とか遠方の人だけ優先されてんだから!、もう信じられない〜」

…別に「信じられない」内容じゃないでしょ。

しかし、連れのオトコはうんうんとうなづいて、女性を調子付かせている。


更に、電車にノートパソコンを置き忘れ、その忘れ物探しに関するJR東日本

対応に憤っているようだった。

「大事な社員のデータが入っているのよ!なのにJRときたら、見つかるかどうか

約束できませんが!だって。見つかんなかったらどう責任とってくれんのよ!」

…責任をとるのはキミだろ。ヒトのせいにするのもいい加減にしなさいよ。


と、いうような話を、言葉を変えて、何度も何度もつれの男性に言っている。

話としては大したことは無いのだろうが、繰り返される内容と、耳を塞いでも

入ってくるキンキン声に次第にイライラしてくる。

しかし、自転車を置いている車両からおいそれと動くわけには行かない。

それに、自転車を迷惑かけずに置ける場所と言ったら、

先頭車両か最後尾車両のドン詰まりにしか無いのだから、そもそも車両を移動するわけにいかない。

やがて、酒のワンカップのほかに、缶コーヒーの空き缶が転がってきた。

ヤツらが飲んでいたものだ。さりげなく、ヤツらのボックスに蹴り返してやった。

途中駅から乗ってきて、自分と同じボックスに座ったジイサンは、次第にしかめ面して、

別の車両に移ってしまった。

キンキン女は「ワタシって出来るOLじゃん。まったく最近のコはなってないんだよな」

などと言い出した。

その出来るOLは、おもむろにケータイで、友達に電話をしだした。電車の中だぞ、ここは。

もうガマンできなくなり、「さっきからウッセーんだよ、バーロ!」と

ココロの中で叫ぶ。

あぁそうか、出来るOLってのは、「電車の中でもケータイで話が出来るOL」のことなんだな。

電話が終わった女は、「ホンっとに、○○ちゃんて優しいんだよ!」と言いだした。

…そうだろそうだろ、キミみたいなのに付き合ってくれている友達は相当優しいね。大事にしなさいよ。


柏を過ぎて立ち客が出てきたが、そいつ等は空いてる席に荷物を置き、

相変わらず二人でボックスシートを占領している。

もっとも、空いてたとしても誰も座る気にならないだろう。


京浜東北に乗り換えるために日暮里で下車して連中のバカキンキン声から開放されたが、

行き以上にくたびれた気がした。