東扇島自転車探訪

京浜工業地帯のど真ん中に位置する人工島、東扇島。

ここには「川崎マリエン」という、展望施設を備えた建物がある。

ごみごみしていない穴場的な展望スポットで、結構気に入っており、

クルマでたびたび訪れている。

ここに行くためには、川崎港海底トンネルを通らなければならないが、

このトンネルは歩行者・自転車は通行止めだ。

トンネル入り口にも規制標識がしっかりとある。

しかし一昨日訪れたときに、海底トンネル出口の信号で停車していると、

「歩行者・自転車は○○から通ってください」のようなアナウンスが

坑口のスピーカから聞こえてきた。

もしかして、歩行者・自転車でも行けるのだろうか?

実地確認すべく、本日13時40分川口の自宅をクロスバイクで出発した。

いつもながら出発が遅いが、川崎だから近いだろう。

明治通りを経由し、天現寺で右折。五反田から国道1号に入る。

15時8分。西馬込に差しかかると、見覚えのあるビジネスホテルが

見えてきた。最近メーカーの研修を受けたときに宿泊したところだった。

クルマの音がうるさいと思ったら国道1号に面していたのか。

15時27分、多摩川を渡る。ここから国道1号を離れ堤防沿いの県道を行く。

河川敷に馬場が見えてきた。更に堤防外には厩舎らしきものが見えてきて、

川崎競馬のものであることが判明した。

第一京浜の交差点に至ると、川崎競馬場は目の前にあった。

少し西に進み国道132号に入る。

産業道路を過ぎ、「夜光」の交差点に至ると、コンビナート地帯の始まりだ。

自然も好きだが、こういう近未来的な風景も好きなので、何となくわくわくする。

工場地帯の直線道路を走っていると、意外に早く川崎港海底トンネルの坑口に至った。

スピーカからは、「川崎港海底トンネルは自転車・徒歩では通行できません。

公園内にある換気所横から、自転車・歩行者用通路をご利用ください」というアナウンスが

エンドレスで聞こえてきた。おぉ、やっぱり行けるんだ。

ちどり公園を進むと、「東扇島方面人道入口⇒」の案内標識が出てきた。

おまけに、「川崎港海底トンネル歩行者通行案内図」もあるし、

換気所は上部が水色下部が白で塗装された巨大な建物なので迷うことは無いだろう。

ほどなく入り口に至ると、緑に白抜き文字で「海底トンネル歩道入口」とあった。

人道と言ったり歩道と言ったり、お役所の仕事にしては珍しく表記が統一されていない。

「高さ2m頭上注意。自転車は降りてください」とも書いてあった。

すぐ隣に、自転車及び歩行者専用の規制標識があったが、自転車の図柄が後から消されていた。

だったら、最初から歩行者専用の規制標識にすれば良いのに…

歩道に入ると、左右に自転車用のスロープがあり、真ん中は階段。で、階段の中心には手すりがある。

これでは、どのみち自転車は降りざるをえない。

最初の角を曲がり、更に階段を下りていく。歩道が濡れているが、まさか海水が漏れているわけでは

ないだろうなぁ。

間もなく、「人道内カメラ監視中」の張り紙がされた自動ドアが現れた。あれ、また「人道」になった。

しかしなんで、自動ドアが必要なんだろうか。自動ドアが開くと、そこから先は階段では無くなった。

どこまでも続くかのような緩い下り勾配の直線路。自分以外誰の姿も無い。

無駄に明るい蛍光灯の光と相俟って、一定間隔でスピーカから流される

「ここは歩行者専用通路です。自転車はおりて通行してください」との乾いた感じの女性の声が

人道内に反響し、無機質な感じを醸し出してる。

なかなかイイ雰囲気!

カメラ監視中の張り紙のとおり、人道内にはカメラが点々と備え付けられていた。

ま、監視と言ったって録画しているだけで、リアルタイムに人間が見て無さそうな感じがする。

しかし、警告を無視したらカメラの向きが変わって、そこからレーザービームでも飛んできそうな

感じもする。

人道の両側には、ところどころ銀色の「退避扉」があり、

「この先車道危険!監視カメラ作動中」の張り紙がしてあった。

上り線・下り線の車道の真ん中に人道があることが分かる。

やがて、勾配は登りになり、さらに階段となり、自動ドアが現れた。16時10分。

両側に自動ドアがあるということは、悪さをしたら自動ドアが開かなくなって、

人道内に閉じ込める装置として機能するのではないか…そんなことを思った。

更に階段を登り外に出る。いよいよ、東扇島に上陸したわけだ。

東扇島側の人道入り口にも自転車及び歩行者専用の規制標識があったが、こっちのは、

自転車の図柄は消されて無かった。

どうやら、ちどり公園側の標識はイタズラされたらしい。

京浜運河の反対側に、さきほど入ってきた換気所が見えた。

帰りの時に困らないように現在地を押さえて、島内探検に出発する。

東扇島は京浜工業地帯にあるが、コンビナートの類は無く、むしろ物流拠点としての

倉庫が多い。また港として荷揚げの場であり、海に面しているところは一部を除いて

立ち入り禁止だ。

まず東端に行ってみると、草地が広がる東扇島東公園があった。

あれ?こんな公園あったんだろうか。いつも川崎マリエンしか来てないので、

知らなかった。

堤防に囲まれた入り江、小さいながらも砂浜もあり、家族連れでにぎわっていた。

なかなか広々として気分の良い公園であるが、パラパラと雨が降り出した。

天気予報通りになってしまったが、すぐ止んだ。

暫く眺めて、公園を後にする。公園駐車場から出場するクルマが長い列を作っていた。

続いて、川崎マリエンに向かう。ハラが減ったので、近くのセブンイレブンで、

緑のたぬき大盛りと、緑茶、焼鳥を購入。380円。

店を出て、ドアのガラスに映る姿を見ると、ルンペン顔負けの

髪ボサボサのかなりアヤシイ状態になっているのに気づいたが、もう遅い。

マリエンには、ホオジロザメの剥製が展示されている。

このへんの運河に迷いこんだかで、死骸で発見されたのを剥製にしたらしい。

世界最大級のオスのホオジロサメで、確かに大きい。

以前に愛称を募集していて、自分も「シャーくん」などと名づけて応募したのだったが、

見るといつの間にか、「かわジロー」に決定されていた。

マリエンの裏手の公園からスロープが延びているのが前から気になっていたので、

行ってみると、西公園・東公園に至る緑道ということが分かった。

東公園はさっき行ったので、この道を経て、西公園に行く。

西公園は東扇島の西端にあり、釣り人ばかりだった。

JFEの製鉄所が見え、ちょうど鉄鉱石運搬船の荷役を行っているところだった。

展望のためのちょっとした丘があり、らせん状のスロープが頂に続いていたので、

当然自転車で行ってみる。

沖には特徴的なカタチをした、LNG運搬船らしきのが見えた。

オートオークションの会場や、東電の火発が一望できた。

そうこうしているうちに、時刻は17時を廻ってしまった。

メータを見ると50キロ近い距離を示していた。意外に長い距離にアセって、戻りにかかる。

人道の入り口近くに、「川崎漁業ゆかりの地」という石碑があった。

東扇島は人工島なのに。なぜだろうか…?

再び人道を抜けちどり公園に出る。ノラネコが結構居た。

工場群を眺めながら、夜光に差し掛かると、「夜光町の由来」の案内板が目に止まった。

見てみると、川崎大師に関係している。昔、無実の罪で国を追われた武士が、

川崎で漁をして貧しく暮らしていた。夜になると明るく光り輝く場所が海中にあり、

夢枕に立った高僧のお告げに従い、網を入れると弘法大師の尊像があった。云々という話。

夜光って、コンビナート群の照明から来てるのだろうと思っていたが、そうだったのか。

帰り道、すっかり暗くなってしまったが、ライトアップされた東京タワーなど余計な

寄り道をしてしまい、軽いポタリングのつもりが、100キロになってしまった。